インド映画「アメリカ(UMRIKA)」。美しい嘘が重なる、とある村の家族の物語【Netflix】

動画配信サービスNetflixで視聴。2015年制作のインド映画「アメリカ(原題:UMRIKA)」。
踊ったり歌ったりしないヒンディー語のインド映画です。しっとりとしてて、情緒的で、あまり多くを語らないような。2015年のサンダンス国際映画祭ワールド・ドラマ部門でワールドシネマ観客賞を受賞したそう。
監督のプラシャント・ナイール(Prashant Nair)氏はインドで生まれ子ども時代をヨーロッパやアフリカ、アジアなどで過ごした国際派。だからこそ、映画「アメリカ」もヒンディー語映画ではあるもののヨーロッパ圏の映画のような雰囲気なのかも。
主演は第85回アカデミー賞最多4部門を受賞した映画「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」でも主役を務めたスーラジ・シャルマ(Suraj sharma)。
ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日を観た時は特に何も感じなかったけど、この映画「アメリカ」を観て、スーラジ・シャルマ氏の俳優としての魅力に気がつきました。
ボリウッド映画で人気のある俳優さんって、筋肉ムキムキで隠しきれないセレブ感を匂わせてて演技もけっこう大げさで暑苦しい感じの人が多いんですけど。
一方、スーラジ・シャルマ氏は見た目も演技も自然で。この映画「アメリカ」にいたっては、見事にインドの村に住む青年のピュアな美しさを表現してました。
[ad]インド映画「アメリカ」のざっくりとしたあらすじ
舞台はとあるインドの村。
村の青年、ウダイはアメリカン・ドリームを追い求めて旅立つ。
その後待てど暮らせど家族のもとにアメリカに渡ったはずのウダイからの便りはなく、母はふさぎこみ鬱状態。父と6歳の弟のラマカントは母と同じ部屋で寝ることも許されず、外で2人で寝る始末。
そして数ヶ月後、ようやくウダイからの手紙が届きはじめる。アメリカの日常の写真がコラージュされたウダイからの手紙に母はすっかり元気を取り戻し、家族仲も通常の状態に戻っていった。
そしてラマカントが成長し青年になった数年後のある日のこと、事故で父が突然亡くなってしまう。
父の遺品のなかに真新しいレターセットや切手を発見するラマカント。これまでアメリカからウダイが送ってきていた手紙は、実は父と叔父が母を元気づけるためにずっと偽装していたものだったのだ。
旅立ってから一切連絡を取らなかった兄。
母のことを思い、兄ウダイを探すため、ラマカントはまず兄が最後に消息を絶った都市、ムンバイで働きながら捜索をはじめるのだった。
インド映画「アメリカ」のみどころ
英語で他者を気遣ってつく嘘のことをホワイトライ(white lie)と呼ぶが、この映画「アメリカ」は登場人物たちのホワイト・ライの重なりによって紡がれるストーリーだと思う。
ネタバレになるのであまり詳しくは書けないけど、映画のタイトルは「アメリカ」なのに、アメリカでの撮影シーンは一度も出てこない。
監督が「神話としてのアメリカを描いた」と語るように、この映画の中でアメリカはキラキラと輝くお金持ちの国としての象徴でしかない。
だからこそ、原題はAmericaじゃなくてUMRIKAなんだろうなぁ。(UMRIKAはアメリカをインド人的発音で表記したもの)
映画のなかで徐々に明かされる真実。
兄弟は思いもかけない場所で再会し、最後にとっておきの美しい嘘をつくのでした。
暗くて静かではっきりしない映画が好きな私は、個人的には良い映画だと思いました。でも展開がメリハリ効いてて分かりやすい映画が好きな人にとっては「何これ?つまらん」ってなるかも。
兄ウダイを演じたのは、映画ムンバイ・ダイアリーズ(原題:DhobiGhat)でムンバイの洗濯屋(ドービー)の青年を演じたPrateik Babbar。
あまりに主演のスーラジ・シャルマと外見が似てたもので、一人二役演じてるのかと勘違いしてしまった。彼もまた、派手な作品より映画ムンバイ・ダイアリーズや今回の「アメリカ」みたいな、ちょっとアートな香りがする淡々と物語が進んでいく映画の方が合ってる気がする。
インド映画「アメリカ」は、ミニシアター系の映画が好きな人には特にオススメの映画です。