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インド映画「ザ・ホワイトタイガー」ネタバレ解説と感想。シニカルに貧困格差を描き出す!

 
ザ・ホワイトタイガー インド映画
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ラクシュミー綾子
埼玉生まれインド育ちカレー好きそうな奴はだいたい友達。さすらいの星よみライター。 2010年〜2015年、インド、ニューデリーの地で修行(仕事)に励む。日本語フリーペーパーの編集などの仕事に携わり、2015年秋にチベット人の彼と結婚。日本に帰国。 占星術をもとに日々をつづるブログ「CHARKHA NOTE」および占星術鑑定屋「CHARKHA STORE」を運営。

みなさまこんにちは。インド映画愛好家のラクシュミー綾子です。

自分が観たインド映画のトキメキや興奮など、あらゆる感情を誰かと共有したいなと思い、このインド映画ブログに思いをぶつけております。

今回ご紹介する映画はこちら!2021年公開「ザ・ホワイトタイガー(THE WHITE TIGER)」!!!
ホワイトタイガー インド映画

こちらの映画をズバリ一言で言い表すなら・・・

現代インドの格差と希望をポップでブラックに描いた成り上がり物語!!!

日本でもNetflixで配信されています。

監督はイラン系アメリカ人で製作や公開もアメリカなので、厳密には「インド映画」と呼べないのかもしれませんが・・・。

原作はインド系作家のアラヴィンド・アディガ氏、出演しているキャストも皆インド人の方々で舞台はもちろんインド国内ですし、セリフもヒンディー語と英語のミックスですので、「インド映画」って呼んじゃいます。

自分が昔インドで働いていた頃に訪れてた高層マンション群が舞台だったり、インドに住んでいた頃に英語版の原作小説を読んだこともあり、何かと思い入れの深い作品なので高評価。

インド自体には特に興味ないんだよね、という方には、ちょっとストーリーに入り込めない部分もあるかもしれません。

作品情報

まずは映画「ザ・ホワイトタイガー」の概要や監督、出演者などをご紹介!

予告編はこちら↓

インド映画「ザ・ホワイトタイガー」の概要

映画「ザ・ホワイトタイガー(THE WHITE TIGER)」は2021年1月13日にアメリカのいくつかの劇場で公開された後、22日にNetflixで配信が開始。(劇場公開から配信までの期間が極端に短いのはコロナによるロックダウンの影響なのかな?)

第93回アカデミー賞の脚色賞にもノミネートされました。

インドの貧困層に生まれた青年バルラームが都会の裕福な一家の運転手になり、ある事件をきっかけに奴隷人生に区切りをつけ、最後は成功した若手起業家へと成り上がるまさにインディアン・ドリームな物語

貧困格差や現代インドの闇と光をユーモラスかつポップで皮肉たっぷりに描いてます。

同名の原作は、日本でも「グローバリズム出づる処の殺人者より」というタイトルで発刊されています。

原作を読んだのがもう7〜8年前くらいになるので内容を忘れてしまっていた部分が多いのですが、

それでもこの映画はかなり原作に忠実に作っているな!という印象。

ちなみにタイトルの「ホワイトタイガー」の意味ですが。
ホワイトタイガー

ホワイトタイガーは文字通り毛並みが白いベンガルトラの変異種。昔はインド国内で野生のホワイトタイガーが生息していたものの、今は頭数を限定し近親交配で種を繋いでいるそう。

つまり、「非常にレアな種=天才」の比喩でこの「ホワイトタイガー」という言葉が使われているのですね。

映画内では貧しい家庭の少年である主人公バルラームが、学校内で天性の賢さを発揮し「someone born only once in a century」、つまり1世紀に1人の天才と呼ばれるシーンが出てきます。

しかしながら、祖母の強制的な意向によりデリーの学校への進学は叶わず、学校自体を辞めてしまいます。勉強するくらいなら働いて金稼げ、ということです。

それでも、ホワイトタイガーの魂はずっとバルラームの胸の中に眠っています。

そして、ふとしたきっかけで彼の中のホワイトタイガーは牙を剥き、自分を囲っていた強固すぎる「鳥かご」からの脱出を成功させるのです。

インド映画「ザ・ホワイトタイガー」の監督とキャスト

ここからは、映画「ザ・ホワイトタイガー」の監督とキャストについてご紹介。

まず監督はラミン・バーラ二氏。

冒頭でも書きましたが、イラン系アメリカ人の監督です。

代表作はリーマン・ショック後の社会問題を描いた「ドリーム ホーム 99%を操る男たち」や「華氏451(2018)」など。

社会問題や世の中への風刺をテーマにした作品が多いですね。

そして、主人公のバルラームを演じるのはアーダルシュ・ゴウラヴ(Adarsh Gourav)
アーダルシュ ゴウラブ
1994年生まれの若手俳優さん。

元々は幼少期からインド古典声楽の歌手としてコンクールに出演していたそう。その縁でTVドラマや映画のお仕事に誘われることもあり、

シャールク・カーン主演の2010年の映画「マイネーム・イズ・ハーン(My name is Khan)」では少年時代の主人公を演じたらしいのですが・・・※当時の写真はこちらの記事に載ってます。

その後は役者としてのキャリアは特にパッとせず。

何かの縁で今回の映画「ザ・ホワイトタイガー」のオーディションに誘われ、「主人公バルラームのイメージにピッタリやでーー!!」と絶賛されて抜擢されたそうな。

これをきっかけに、役者としてのキャリアが華開いていくかもしれませんね!

バルラームが仕える主人、アメリカ帰りのエリート息子アショークを演じるのはラージクマール・ラーオ

ラージクマール・ラーオ インド俳優

ラージクマール・ラーオ Rajkummar-Rao

1984年生まれ。

代表作は「クイーン 旅立つわたしのハネムーン(QUEEN)」など。


主人公をあっさり振ったくせに、後からより戻そうとしてくるイケすかない婚約者役で出てましたねー。

今回もある意味イケすかない役ではあるのですが・・・洗練されたアメリカ帰りのエリート坊ちゃん役を演じきってました!

そんなアショークの婚約者、ピンキーを演じるのがプリヤンカー・チョープラー嬢!!

プリヤンカー・チョープラー ボリウッド女優

プリヤンカー・チョープラー Priyanka-chopra

ミス・ワールドを取ったこともある美人女優さん。

2018年に米ミュージシャン、ジョナスブラザーズのニック・ジョナスと結婚。

最近はアメリカで自伝本も発売したりノリに乗ってます。

今回の映画でもアメリカ生まれのインド系女性を演じてますが、アメリカーンな英語や振る舞いがぴったりでした!!

あらすじ

それではここからは、映画「ザ・ホワイトタイガー」のあらすじをご紹介していきます!!

2010年、若き起業家の主人公バールラムは中国の温家宝首相が自身の住むインドのIT都市バンガロールを訪問するとのニュースを耳にし、温家宝首相あてに自分の人生にまつわる話をメールでつづります。

つまりストーリーは「起業家として成功した後の主人公バルラームが、IT都市バンガロール訪問を控えた中国の首相、温家宝に宛てて書いている手紙(メール)という体裁」で進んでいくのです。

幼少期のバルラームは貧しい農村の息子。学校では持ち前の賢さを発揮し「1世紀に1度の天才、ホワイトタイガー!」と言われるほどだったけれど、父親が結核で病死。祖母はバルラームを働かせるため、学校を辞めさせてしまう。

そんな折、村の地主とその息子、アメリカ帰りのアショークがバルラームの集落を訪れる。

アショークの姿に何か光るものを感じたバルラームは、彼の元で運転手として働くことを決意。

天性のズル賢さを発揮し、見事にアショーク専属の運転手になるのだった。

ーーーこの辺からネタバレありですーーー

アショークの家族はファミリービジネスにおける税金の支払いを避けるため、政治家への多額の献金を画策。アメリカ育ちの妻、ピンキー、そして運転手バルラームを連れて首都デリーへ転居。デリーの南にあるグルガーオン(現グルグラーム)の超高級マンションに引っ越すのだった。

ピンキーの誕生日に事件が起きる。アショークとピンキーはパーティーに参加して泥酔。ノリでピンキーが車を運転してはしゃいでいたところ、路上生活者の子供をはねてしまう。

アショークの父親であるストークは、その事件をバルラームがやったものとして処理しようと画策。優しい態度を見せてバルラームを説得する。主人に逆らえないバルラームは、自分が事件を起こしたことを認める書面にサインさせられてしまう。

結局、警察にその事件の被害が届け出られなかったため、バルラームは罪に問われないことになった。

ストーク(アショーク父)の態度は一変。安心してストークにすがりつき泣こうとするバルラームを蹴り飛ばす始末。

その事件のショックやストークが象徴する古いインドの体制にウンザリしたピンキーは、アショークを置いてニューヨークへ帰ってしまう。

傷心のアショークを気遣うバルラームだが、自分のことで精一杯なアショークはそんなバルラームをぞんざいに扱い始める。

アショークの元で永遠に働き続けることができないと悟ったバルラームは、あの手この手で小銭を稼ぎ始め独立の準備を始めることに。

そんな折、バルラームの祖母がまだ少年である彼の甥っ子に手紙を託しバルラームの元に行かせる。

手紙の内容は、彼のお見合い結婚をセッティングしている話、そして仕送りをしろというメッセージ。

貧困層の「鳥かご」の窮屈さを感じ始めるバルラーム。

さらにアショークが新しい運転手を採用しようとしていることに気が付き、バルラームの中に眠るホワイトタイガーが目覚め、ついに行動に出ることに。

大雨の中、政治家への多額の賄賂を持ったアショークを乗せて車を走らせるバルラーム。その途中でアショークを殺害し大金を奪って甥っ子と逃げるのだった。

バルラームが行き着いたのはIT都市バンガロール。アショークから盗んだ金を警察への賄賂として活用しながら、画期的なタクシーサービスを提供するビジネスを立ち上げる。

見事にアショークのような富裕層に成り上がったバルラーム。彼はもう、鳥かごの中の鳥ではないのだ。

インド映画「ザ・ホワイトタイガー」の見どころと感想

ここからは個人的な感想や見どころ、ネタバレありの解説をお届けしていきます!

映画の見どころポイント
  • ブラックな貧困格差の描き方に注目!
  • なぜ温家宝首相への手紙なのか

格差を美化しないブラックユーモア

映画「ザ・ホワイトタイガー」が描くのは現代インドに根強く残る貧困層と富裕層の格差

この「格差」というのはインド映画でよく描かれる定番テーマのような気がします。

特に恋愛映画では、お互いの身分格差が障害となって結ばれない・・・!!みたいなストーリーがよくありますし。

そういえば、アカデミー賞受賞した「スラムドッグ$ミリオネア」もある意味で貧困格差が描かれた作品でしたよね。

スラムドッグミリオネアもある意味成り上がりの物語だけど・・・貧困層が美しく描かれすぎているかも。

「格差」はお馴染みのテーマではあるのですが、「ザ・ホワイトタイガー」の場合は金持ちも貧乏も、みな美しく描かれてないというのが特徴でしょう。

バルラームはインドの貧困層を「鳥かごの中の鳥」だと言います。

主人に飼われ、外に出ることができずに生まれて死んでいく奴隷の象徴です。

学校では天性の賢さを発揮していたバルラームだったのに、祖母は彼の進学を認めず働かせ、縛り付けます。そもそも彼の家族は鳥かごの外に出られるとは思っていないのです。

そして、そんな「鳥かごの鳥」たちの主人の象徴として描かれるのが、村の地主ストークや息子アショークなどの富裕ファミリー。

父ストークはバルラームを奴隷のように扱います。

息子アショークやその妻ピンキーはアメリカ帰りの若い世代ということもあり、リベラルな感覚を持っていてバルラームにも対等に接してくれます(表向きは)

ピンキーはバルラームに「もっと夢をもて、上を目指せ。」と諭します。

そんなことを言う割には、結局自分が起こした罪をバルラームに擦りつける流れに反対はしないのだから、アショークもピンキーも「金持ちの偽善臭」みたいなものが漂ってくるわけです。結局鳥かごの鳥を飼う主人に変わりはありません。

最終的にバルラームは「アショークのように」、役人に賄賂を渡して金で世の中を上手に渡っていく術を身につけます。

ブラックユーモアたっぷりに描かれた貧困層と富裕層のリアルな姿。それがこの映画「ザ・ホワイトタイガー」のみどころの一つでしょう。

中国とインドは世界の虎に成るか

ストーリーは原作と同様、「起業家として成功した後の主人公のバルラームが、IT都市バンガロール訪問を控えた中国の首相、温家宝に宛てて書いている手紙(メール)という体裁」で進んでいきます。

これ、ちょっと不思議な感じがしますよね。

単純にバルラームの成り上がり物語として描いたらいいと思うのに、なんで中国が絡んでくるの?と。

そのヒントは、この原作が書かれた当時の状況を振り返ると見えてくるでしょう。

原作が出版されたのは2009年。ちょうどその数年前から、「BRICs」という言葉が世の中で話題になり始めた頃でした。

ブラジル、ロシア、インド、中国。2000年代以降に著しい経済発展を遂げた4ヶ国の総称です。

当時はまだまだ「発展途上国」みたいな印象だったインドですが、この頃から徐々に「インドのITがすごいらしい」と騒がれ始めましたよね。

ザ・ホワイトタイガーの終盤、温家宝首相(もちろん実物ではない)が出てくる場面でバルラームはこう言います。

“It’s the century of the brown man and the yellow man”「これからは茶色い人間と黄色い人間の時代だ」

圧倒的に白人優位な社会が続いてきたこの世界。でもこれからは俺らインドや中国が台頭できる時代だぞ、というわけですね。(中国とインドの仲はよろしくないですけど)

この映画の「今の時代、誰もが奴隷から主人へ成り上がることができる。」といったメッセージは、この温家宝首相へのメールといった形でも強調されているのでしょう。

まとめ

インドの貧困格差の現実がなかなかリアルかつポップに描かれています。

あと、バルラームが無意識にズボンの股間を触りながらチャイを持ってきてピンキーに怒られたり、パーン(噛みタバコ)で歯が着色してしまってたり、何かと「こういう人、インドにいるいる!」と思わせるポイントが面白かったです・・・。まさに彼はこの映画の主人公がハマり役だったのでしょうね!

社会風刺系の映画が好きな方におすすめです!

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ラクシュミー綾子
埼玉生まれインド育ちカレー好きそうな奴はだいたい友達。さすらいの星よみライター。 2010年〜2015年、インド、ニューデリーの地で修行(仕事)に励む。日本語フリーペーパーの編集などの仕事に携わり、2015年秋にチベット人の彼と結婚。日本に帰国。 占星術をもとに日々をつづるブログ「CHARKHA NOTE」および占星術鑑定屋「CHARKHA STORE」を運営。







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