インド映画「最後の願い(Sardar Ka Grandson)」祖母の夢を大胆な方法で叶えちゃうぞ!!

みなさまこんにちは。インド映画愛好家のラクシュミー綾子です。
自分が観たインド映画のトキメキや興奮など、あらゆる感情を誰かと共有したいなと思い、このインド映画ブログに思いをぶつけております。
今回ご紹介する映画はこちら!2021年公開のNetflix映画「最後の願い(Sardar Ka Grandson)」!!!
こちらの映画をズバリ一言で言い表すなら・・・
余命わずかな祖母の最後の願いを孫が超絶大胆な手法で叶えちゃうぞ!!!!日本ではNetflix(ネットフリックス)で配信されています。
老いた祖母の最後の願いは、思い出の詰まった故郷の家に帰ること。その夢をかなえようと奔走する青年の思いが、国境を越えた一大ミッションへと発展してゆく。—Netflix紹介文より-
ちなみに原題の「Sardar Ka Grandson」はヒンディー語で「サルダールの孫」の意味です。
登場する余命わずかな祖母の名前が「サルダール」さんなんですね。(ターバン巻いたスィク教徒のおじいちゃんの敬称と思ってたんだけど、女性の名前でも使われるようですね。)
余命わずかな祖母と孫の最後の交流を描いたヒューマンドラマかと思いきや、とんでもなかった。予想を裏切られました!
笑いあり、涙あり、アクションあり、お決まりのストーリー展開無視したダンスシーンありで、シンプルに楽しめる古典的な手法が盛り込まれたインド映画らしい作品だったように感じます。
あり得ねー!!ってツッコミ入れたくなるシーン満載なので、決して真剣に観ないでください。ポップコーン片手にリラックスして鑑賞しましょう。
目次
作品情報
まずは映画「最後の願い(Sardar Ka Grandson)」の概要や出演者をご紹介!
予告編はこちら↓
インド映画「最後の願い(Sardar Ka Grandson)」の概要
インド映画「最後の願い(Sardar Ka Grandson)」。ストーリーの主な舞台は北インドのパンジャーブ州、スィク教の聖地「黄金寺院」やパキスタンとの国境セレモニーで有名なアムリトサル(Amritsar)。
この映画は主人公の祖母、90歳になるサルダールの“最後の願い”を叶えるべく、孫が奔走する話。
祖母サルダールの「最後の願い」というのが、「パキスタンのラホールにある、70年前に夫と一緒に暮らしていた家を見たい」というものなのですね。
映画の肝となるこの「願いごと」、インド(及びパキスタン)の歴史に詳しくないと、ちょっとわかりづらい部分です。
なんでサルダールは70年前に自分の家を離れてインドにやってきたのか?
それは第二次世界大戦後に起きたインド・パキスタン分離独立(印パ分離)が原因。
イギリス領インド帝国の解体が始まった際、今のアムリトサルやラホールがあるパンジャーブ地方が急ピッチでインドとパキスタンそれぞれに分割され、
ヒンドゥー教徒はインド側へ、そしてイスラム教徒はパキスタン側へと強制的な移動を余儀なくされたのです。
オレンジがインドで、緑がパキスタンの領土に。左上の方が今作の舞台、パンジャーブ地方。人々の移動や衝突が示されてます。
この混乱の最中、パンジャーブ地方ではヒンドゥー教徒とイスラム教徒の間で衝突、暴動、虐殺に報復の連鎖が発生。ラホールではヒンドゥー教徒が次々に虐殺されました。
祖母サルダールは、そんな暴動を生き延びて、命からがら息子と共にインドに逃げてきたのです。
今でも何かと緊張状態にあるインドとパキスタン、両国の間柄。
死ぬ前にラホールに残してきた自分の家に行きたい!と言ったって、
簡単に入国はできないのです。
さて、この祖母の最後の願いを、主人公である孫のアムリークはどうやって叶えるのか!?
インド映画「最後の願い(Sardar Ka son)」のキャスト
ここからは、映画「最後の願い(Sardar ka Son)」のキャストについてご紹介。
主人公であり祖母サルダールの孫アムリークを演じるのは、アルジュン・カプール氏。
著名な映画プロデューサーの息子で、とにかく濃いいいいい見た目が特徴!!
個人的には、「インド都市部のショッピングモールとかによくいる、富裕層のヤング」みたいな印象ですが、その「ある意味、庶民的なムード」が現代劇を演じるにはちょうどいいのかも?(いや、イケメンなのかな・・・どうなんでしょ)
主人公アムリークの婚約者ラーダーを演じているのは、ラクル・プリート・シンさん。
アメリカでアムリークと共に運送会社「ジェントル(Gently Gently)」を営んでます。
そして、祖母サルダールを演じるのはベテラン女優のニーナ・グプタさん。
映画では90歳のおばあちゃん役を演じてましたが、ご本人は1959年生まれの60代。ヘアメイクと演技力で見事に変身してたんですな・・・
若い頃のサルダールを演じるのは、アディティー・ラーオ・ハイダリーさん。
この映画の中に出てくるアディティーさんは、ほんとに美しかった。透明感のある美女です。40代って信じられない!!
サルダールの夫、グルシェールを演じるのは、ジョン・アブラハムさん。
この映画ではターバンにヒゲで顔が隠れてたので、「似てる人かなー?」と思いきや。
ジョンを脇役に持ってくるなんて、豪華すぎるぞ。
あらすじ
それではここからは、Netflixインド映画「最後の願い(Sardar Ka Grandson)」のあらすじをご紹介していきます!!
主人公はアメリカのロスアンゼルス在住、アムリーク。
婚約者のラーダーと共に運送会社ジェントル(Gently Gently)を運営している。
客の荷物をうっかり壊してしまうほどにガサツで不注意が過ぎるアムリーク。しかも自分の非を認めないし謝らない。
ラーダーは、
「あなたはいつも壊してばかりで直すことができない!」
とブチ切れて離別宣告をしてしまいます。
傷心状態のアムリーク。そんな彼の元に、実家アムリトサルの父から電話。
90歳になる祖母、サルダールに腫瘍(がん)が見つかり、もう残された時間は少ないので家に戻ってくるよう伝えられます。
実家は巨大な自転車販売会社「チャンピオンズサイクル」を運営しており、その後継者問題も水面下で勃発しているのでした。
自分の死期が近いことを悟ったサルダールは、帰ってきた孫息子、アムリークに「最後の願い」を叶えてほしい。と頼みます。
一緒に現在はパキスタン領になっている都市、ラホールに行って、自分と夫が建てた思い出の家を見に行きたいというのです。
70年間ずっと夫と家を失った喪失感を抱えて生きていたと打ち明ける祖母サルダール。
婚約者ラーダーと別れたばかりのアムリークは自身と祖母の心の痛みを重ね合わせます。そして、絶対に祖母サルダールを思い出の家に連れて行くと約束するのです。
さっそく2人分のパキスタンへの渡航VISAを取得しようとしたものの、
サルダールはブラックリスト入りをしていてパキスタンへの渡航許可が降りないことが発覚。
数年前にクリケットの試合(パキスタンVSインド)で興奮しすぎて、パキスタンの役人と喧嘩し、動画が拡散されていることが原因です。
打つ手がなく悩んでいるアムリーク。そんな時に彼は、TVで婚約者ラーダーが「巨木を動かす方法」について紹介しているのを偶然目にします。
ここで閃いたアムリーク、パキスタンにある祖母の家を、丸ごと土台からアムリトサルまで輸送することを思いつくのです。(実際にそんなことできるのか!?って思いますけど、海外では多数の事例があるみたいですね!)
ーーー※ここからネタバレありですーーー
一度はラーダーに協力を要請するものの、「どうせまた中途半端で終わるんでしょ」と拒絶され、1人で計画を実行することになります。
アムリークはTwitterを通して、インド政府に巧みに「余命わずかな祖母の願いを叶えたい」と訴えかけます。
多くの支持者を獲得したいインド政府やパキスタン政府の思惑が絡み合い、双方のサポートを得られることが決定。祖母には内緒でラホールに行き、家を丸ごと移動させるプロジェクトに取り組み始めることに。
しかし!
やはり一筋縄ではいきません。
今にも祖母の実家が解体されようかというところを食い止めたアムリーク。
その後もクリケットの試合で祖母サルダールと喧嘩した人物が、実はラホール市長でなかなか輸送許可をおろしてくれなかったり。
狭い道路で家の輸送は難航。
それでも、最終的には婚約者ラーダーも登場し、数々の難題を突破して家の輸送に成功するのでした。
昏睡状態にまで陥っていた祖母サルダールでしたが、思い出の家を再び目にしたことで生きる気力を取り戻します。
祖母サルダールはその後7年間生きた後、遺産は孫に等分されることになり、アムリークとラーダーもヨリが戻り、ハッピーエンドで幕を閉じるのでした。
インド映画「最後の願い(Sardar Ka Grandson)」の解説と感想
ここからは個人的な感想やネタバレありの解説をお届けしていきます!
- インドらしい大胆なストーリー展開!
- インドとパキスタンの仲をどう描いたのか?
- 祖母のキャラクターが魅力的
インドらしい大胆なストーリーと構成に注目!
インド映画「最後の願い(Sardar Ka Grandson)」、
愛、友情、笑い、涙、アクション、歌とダンス・・・
割とバランスよくあらゆる要素が盛り込まれた実に「インド映画らしい」作品でした!!
まぁ、いきなり家を移転している側で結婚式があってダンスと歌が始まるとことか、
ストーリーの流れに全く関係ないやん!
あらゆる要素が盛り込まれすぎてカオスな状態になっているインド映画はよくありますが、
この映画はそこまで「何でもあり」な感じではございません。
正直、見始めたときは
はいはい、冒頭でカップルが喧嘩別れするのは最後でヨリが戻る常套パターンだよねー。
って思いました。
実際に祖母の願いが叶えられるかどうかはともかく、
祖母と孫息子の心温まる交流によって、孫息子が心を入れ替えて婚約者ラーダーの存在の大切さに気が付き、真摯に謝罪しヨリが戻ってめでたしめでたし、みたいなストーリーを想像してました。2009年の映画「LOVE AAJ KAL」みたいな感じね。
しかし!!
・・・そんな私の予想はひっくり返されました。
「最後の願い」という何とも切ない邦題に騙されましたが、
現地に行けないなら家を丸ごとこっちに持ってくるという、まさかのダイナミックすぎる展開。
スルッと両政府の支援を得られたり、ごっちゃごちゃのパキスタンの住宅地にある家を丸ごと短期間で輸送したりとか、
あり得ねえええええ
ってツッコミ入れたくなる度120%な部分はあるんですけどっ!
映画に現実味を求めている方は観ない方がいいでしょう。
完全なるフィクションです。ファンタジーです。そこを理解してから鑑賞しましょう。
インドとパキスタン、両国の和平を願う
インドとパキスタン、根深い歴史の因縁もあって、いわゆる犬猿の仲でございます。
祖母サルダールがクリケットの試合で興奮してパキスタン側の観客(ラホール市長)を殴る場面が出てきますが、
実際に、パキスタンVSインドのクリケットの試合って、皆注目するしめっちゃくちゃ白熱するんですよね。
この映画「最後の願い(Sardar Ka Grandson)」でも、印パ分離の際の暴動やら虐殺が描かれ、夫は目の前で殺されちゃうし、なかなかデリケートな部分を扱った作品でもあります。
でもね、
完全に「パキスタン=悪」!!みたいな描かれ方ではなく、
現地の少年に助けられたり、思い出の家の隣にあったベーカリーの老人との心温まる交流があったり、一悶着あった警察と最後は理解し合えたりと、
パキスタン側の人々も好意的に描かれています。(ラホール市長は最後まで悪役ですけどね)
パキスタンとインドの国境のゲートを、思い出の家を載せたトラックが通り抜ける。
かつて祖母が幼い息子(アムリークの父親)を抱いて、ボロボロの状態で通ったその国境のゲートを、歓迎されながら晴れやかにアムリークたちが通り抜けるシーンがあります。
「過去に色々あったけど、今はお互い手を取り合おうよ」なんてムードです。
このシーンを実際にパキスタン側の人が観たらどう思うかは分かりませんが、
基本的には「両国の和平を願う」という意図も込められた作品なのかな、と思いました。
祖母サルダールのキャラが魅力的!
気が強くて、絶対に謝らなくて、病気なのにウィスキーも飲んじゃう破天荒な祖母サルダール。
彼女のぶっ飛んだキャラがこの映画をより魅力的にしてくれてます。
加えて。
回想シーンに登場する若き日のサルダールの美しさ・・・
夫グルシェールと2人で、家の前でガッツポーズで写る写真が出てくるのですが
これもかわいい。
夫を殺され、思い出の家を離れて命からがら逃げてきた過去。
かなーりへヴィーな要素ではあるのですが、
この祖母の明るさや破天荒さ、凛とした強さや美しさによって、映画自体の雰囲気が重苦しくならずに済んでますね。
まとめ
インド映画「最後の願い(Sardar Ka Grandson)」、ここまでご紹介してきた通り、割とツッコミどころは満載な作品ではありますが、
肩肘張らずにリラックスしてインド映画を楽しみたい!なんて方にはおすすめの映画です!!